Doll
4
アイと再会したのは、あの夜から二週間以上経ったある日のことだった。
圭と逢う約束をしていたぼくは、圭の通う大学の前で本を読みながらぼーっとしていた。
夕方だったため、あたりは少し暗くなりかけていた。
が、そんな暗さをものともしないくらいヤケに派手なピンクの頭をした奴が、
本を読んでるぼくの視線の端っこに入ってきたのだ。
ぼくは、しおりを挟むのも忘れ本をバタンッと閉じてから
ゆっくりピンク頭の奴の姿を確認してみる。
―――― やはり、彼女だ。
ひとりきりで 俯きながら こちらへ 歩いてくるではないか。
ぼくは、こんなに早く再会するとは思っておらず少し動揺してしまった。
――― 一緒に「プリント倶楽部」に写ってたあの男は一緒ではないらしい。
彼女の耳からコードのようなものが伸びているのが見えた。
どうやら音楽を聴いているようだった。
ぼくの姿には気付かず、ゆったりとしたペースで歩いている。
「ねえ!」
ぼくと彼女の距離が5mくらいにまで縮まったところで、ぼくは彼女に声を掛けた。
彼女の聴いている音楽に負けないくらい大きな声で。
すると彼女は 一瞬ビクッとして、ぼくの姿を下から上へと視線を移しながら確認し、イヤホンをはずした。
「君、こないだコレ落してっただろ。」
ぼくは財布からプリクラを取り出し、彼女に差出した。
「盗んだわけじゃないよ。返そうと思ったら君、すぐいなくなっちゃっ・・・」
「いらないわ。」
――――― え。
「い、いらない?」
「いらない。」
初めて聞いた彼女の声は想像してたよりずっと高くて、少女っぽさの抜けきらない綺麗な声。聞いていて心地がいい。
「別れたの。」
「・・・え、あ・・この、一緒に写ってるひと?」
彼女はフッと笑いながら、ぼくからプリクラを奪い取り、ポケットから素早く取り出したライターで火を付けた。
「男なんて近づいてきたと思ったら、気づけば勝手にいなくなってる。ほんと身勝手。そう思わない?」
圭と逢う約束をしていたぼくは、圭の通う大学の前で本を読みながらぼーっとしていた。
夕方だったため、あたりは少し暗くなりかけていた。
が、そんな暗さをものともしないくらいヤケに派手なピンクの頭をした奴が、
本を読んでるぼくの視線の端っこに入ってきたのだ。
ぼくは、しおりを挟むのも忘れ本をバタンッと閉じてから
ゆっくりピンク頭の奴の姿を確認してみる。
―――― やはり、彼女だ。
ひとりきりで 俯きながら こちらへ 歩いてくるではないか。
ぼくは、こんなに早く再会するとは思っておらず少し動揺してしまった。
――― 一緒に「プリント倶楽部」に写ってたあの男は一緒ではないらしい。
彼女の耳からコードのようなものが伸びているのが見えた。
どうやら音楽を聴いているようだった。
ぼくの姿には気付かず、ゆったりとしたペースで歩いている。
「ねえ!」
ぼくと彼女の距離が5mくらいにまで縮まったところで、ぼくは彼女に声を掛けた。
彼女の聴いている音楽に負けないくらい大きな声で。
すると彼女は 一瞬ビクッとして、ぼくの姿を下から上へと視線を移しながら確認し、イヤホンをはずした。
「君、こないだコレ落してっただろ。」
ぼくは財布からプリクラを取り出し、彼女に差出した。
「盗んだわけじゃないよ。返そうと思ったら君、すぐいなくなっちゃっ・・・」
「いらないわ。」
――――― え。
「い、いらない?」
「いらない。」
初めて聞いた彼女の声は想像してたよりずっと高くて、少女っぽさの抜けきらない綺麗な声。聞いていて心地がいい。
「別れたの。」
「・・・え、あ・・この、一緒に写ってるひと?」
彼女はフッと笑いながら、ぼくからプリクラを奪い取り、ポケットから素早く取り出したライターで火を付けた。
「男なんて近づいてきたと思ったら、気づけば勝手にいなくなってる。ほんと身勝手。そう思わない?」