君の温もりを知る
第一章
「変わった名前だよね。意味は何?」
いつだっただろう、
君にそう尋ねたことがある。
ああ、それよく聞かれる。
らしくなく含みのない笑顔で
呟いた君は、すぐに答えてくれた。
「当たり前に夜が明けるみたいに、
周りに光を与えられる人になるように、
だと。我ながら、たいした名前だよ」
「…自分の名前、好きなんだね」
「まあ、な。でもさ…」
それまで家族への愛情とか、感謝とか、
そういう温かいものを
隠しきれてなかった笑顔が
一気に曇った瞬間だった。
『あの頃の俺は、誰にも光を
与えてなんてやれなかったからな』
悲しいなら笑わなくたっていいのに。
ただでさえ身長の高い君が
空を仰いで言うものだから、
その表情は私からは見えなかったけれど
無意識に、そう思えた。
夕暮れにまぎれて、
君が何故私にそう話してくれたのか。
今はもう
確かめる術は、ない。