君の温もりを知る
「お待たせしました。ミートドリアです」
お客様が明日だからか、いつにも増して
笑顔な気がする店員さんたち。
一瞬だけ私を睨んで去った彼女に
気付くはずもない明日は、
早くも美味しそうに頬張っていた。
「お前本当に何も食わねえの?」
「夕飯食べられなくなるもん」
「はあ?とか言ってダイエットとかだろ?
無駄無駄!お前は一回太って胸に
脂肪つけた方がちょうどいいんだよ」
「褒められてはないんですね?」
「褒めてる褒めてる。ほら、お食べ」
こうしてこの男が餌付けするかのように
食べさせてくるのはいつものことなので
もはや何も躊躇わずに、口受け入れる。
「…おいしい。やっぱり食べる」
もう一本準備されていたスプーンを
手に取り、向かいのドリアをつつく。
「お?夕飯はどうした?」
「今日は帰りたくなかったことを
思い出した」
「は?何で?」
「…いや、別にどうってことないけど」
ちょっと、お母さんと喧嘩したの。
躊躇いつつ呟くと、明日はがたん、と
立ち上がり、私の腕を力強く掴んだ。
「え、や、明日…?」
「行くぞ、」
「は?どこに?てかドリア食べかけ…」
「…食べてから行くぞ」
「は、はい…」
一体何が明日の気に障ったのか、
それからはひたすら二人で無言で
ドリアをつつき、早々に店をでた。