君の温もりを知る
「いや、本当にいいんですよ。俺一人で」
「大丈夫って言ってるじゃない。この子、
こう見えて意外とたくましいんだから」
は、はあ…。
母親の剣幕に押される明日にも見慣れた頃
夕飯のカレーも二杯目まで綺麗に
平らげてくれた明日を気に入ったらしい
お母さんは、私に明日を送らせようと
半ば無理やりに言った。
そんな訳で、今私達は電灯の光と
家々から漏れる光を頼りに、
月夜を歩いていた。
「今日の宮野さんのソロパート、
かっこよかったじゃん。
さらに人気増すんじゃねえの?」
「もう増してましたけど」
「あ、やっぱそうだった?
ありゃ反則だよなー。お前見る目あるわ。
俺が女だったら惚れちまうかも」
「…明日が女だったら勝てないかも」
「お前、ガチで想像してんじゃねえよ。
吐き気おこるだろうが」
「カレー戻しちゃったって言ったら、
お母さんきっと泣いちゃう」
「おい、冗談きついって。
てかお前の場合、俺だろうが何だろうが
どうせ勝てる気持てえんだろ?」
「そ、そうなんですけども…」
「折角いい物持ってんのに、
自信もてねえんじゃ意味ねえんだよな…」
何か考え出してしまった明日を横目に、
周りの景色を眺めてみる。
でもそれは、ぼんやり流れる景色の中に
ある人を見つける事で、
そこから目を離せなくなってしまう。
(あ、あれって…、)
「…宮野、先輩……?」
住宅街の十字路、大通りの方から来る道の
ここからは距離がある、そこ。
そこにいたのは大好きな宮野先輩と、
私の知らない『女の人』だった。