君の温もりを知る
頭が真っ白になった。
だってほら、こんな夜道に男女二人。
それが意味することなんて、たった一つ。
「行くぞ、貧乳」
私はいつから気づけなかったの?
私の気持ちは初めからダメだった?
次からどういう顔して会えばいい?
「…聞いてんのか?」
考えたくなんかないのに
次々に頭に疑問が浮かんでは、
答えがでなくて、沈んでいく。
「…真白!」
「……!あ、…あけ…び…。
どうしよう、私…」
「いいから。今ならあっちがまだ
気付いてない。走るぞ!」
強引に掴まれた手が痛かったけど、
正直、心の方がずっと痛かった。
バスケ部である明日はもっとずっと
早く走れるはずなのに、
私が走れるくらいのスピードに
合わせてくれて、時々私が
転けそうになるのを見てもいないのに
掴んだ手で支えてくれた。
その優しさに少しだけ涙が滲む。
でも泣くなんてかっこ悪いから、
前を向いて走る明日には
気付かれないように手で拭った。
夜空に光る三日月は、
私をあざ笑ってるかのようだった。