君の温もりを知る
第三章
それは偽物だから
今日は、土曜日。
授業はないものの、午前中は部活が
あるので、私は学校にいた。
ちょうど今は、金管楽器の
セクション練習で、宮野先輩とも一緒に
練習していた。
あれから女の人と一緒な先輩は見ない。
やっぱり偶然帰りが一緒だっただけなのか
はたまた正式な彼女ポジションなのか。
はっきりしないで悶々と悩んでいるのは、
私が先輩に、直接聞けていないからだ。
明日は聞け聞け、うるさいけど、
やっぱり普通なら聞けないと思う。
「はい、二十分休暇ね」
リーダーのその声を聞いて、
各々の行動を始めるメンバー達。
さて、私はどうしよう。
練習をするもよし、友達と喋るのもよし。
寝るのだって、自由だ。
(ちょっとだけ、寝ようかな)
なんて思ったとき。
「吉原、ちょっといいか?」
「あ、先輩!」
「昼寝するつもりだった?」
「い、いや、別に…」
「ならさ、俺とメロディが重なるところ
合わせてくれよ。な?頼む」
「いや、こちらこそお願いします」
「じゃ、外に出てするか。田原ー!
俺らちょっと別で練習すっから
遅れるかもしんねえー!」
「りょうかーい」
「じゃ、行くぞ」
そう言って、私の腕を引っ張って歩く
先輩の後を、ホルンを抱きしめて追う。