君の温もりを知る
「私にどうしろってんだ…」
取り敢えず学校から外に出たは
いいものの、何処に行くあてもなく、
ただただその場に立ちすくすしか
できなかった。
学校の目の前は車通りの多い五車線の
道路のある大通り。
エンジン音や、路面にタイヤのゴムが
擦れる音、自転車のベルの音。
普段なら気にもならないような生活音が
今は不思議と気持ち悪く思える。
そうして私はなにを思ったか、
自然と足を進め、駅へと歩いた。
駅へはすぐに辿り着き、
桃ちゃん達と遊びにたまに遊びに
行く時に乗る電車に乗り込む。
三つ目の駅で降りて、
見たこともないような道を
なぜだか迷いもなく進んだ。
「あら、お嬢ちゃん。見ない顔だねえ」
そうして辿り着いたのは、
どこにでもありそうな普通の
小学校の前だった。
聞いたこともないような名前の学校で、
その前の家の庭で日向ぼっこを
していたおばあちゃんに声をかけられる。
「そうなんです。始めて来て…」
「だけど、なんでかねえ」
そのおばあちゃんは耳が遠いのか
私の言葉には反応せず、
ゆっくりと、言葉を呟いた。
「とっても、『おかえり』って
言ってあげたくなるよ」
その瞬間、入り込んできたのは、
紛れもない、『誰かの記憶』。