君の温もりを知る

【side* XXX】

薄れゆく意識の中で、
俺は意外にも冷静に考えた。

これが走馬灯ってやつだろうか。

今まで出会ってきた人の顔が
浮かんでは消えていく。


女手一つで俺達兄弟をここまで
育ててくれた、母親。

母親の助けにと、遊びたい盛りに
風俗業にまで手を出して
俺らの生活を支えてくれた、姉ちゃん。

ごめんな、恩返しするのは
こっからだってのに、
どうやらそれは、できそうにない。

それから、

俺を兄として慕ってくれた、
まだ小さな弟、妹達。

ついさっきだった。
俺は、兄として最低のことをしたな。

恨まれてもしょうがないと思う。

でもいくらなんでも、
このタイミングで、なんて。

神様、あんまり薄情じゃないか。


最後の最後で、
家族に対して思うことが
謝罪ばっかりとは、残念だな。

だから最後に、これだけ。


この世の全ての人なんて規模の
大きなもんじゃなくていい。

ほんの数人でいいから。
ほんの少しでも、いいから。

この大好きな人達に
俺は『光』を与えたい。

そして、言おう。

俺を愛してくれて『ありがとう』と。

【side* XXX fin.】


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