君の温もりを知る
私が頷くのを見た彼は、その穏やかな
表情はあくまで保って、言った。
「…教えてやんねえ、」
「……はい?」
「だから、教えねえって」
「ちょっと、ひど…」
「だって別にたいして面白え話題もねえし
なんたって秘密多き男って憧れるだろ?」
気が付けば、そこは駅前で。
また、いつもみたいに流される。
そう思って明日の手を強く握り返す。
「だめ、まだ帰りたくない」
私の言葉を聞いた明日は、そんの一瞬
目を見開いたが、すぐにいつもの
余裕のあまり余った表情に戻った。
「今日はずいぶん我儘言うな、お姫様。
なんだ?発情期か?」
「違うけど…!何か聞くまで帰らない!」
「…はあ、珍しい事だししょうがねえな。
特別に、一個だけだぞ」
「……なに?」
「今日が、……」
「…今日が?」
「俺の誕生日だってこと」
ほら、祝え祝え。盛大に祝え。
おめでとうって、言えよ。
そう笑って子供をなだめるように
頭をぽんぽん撫でられる。
「まあ、俺の誕生日だし、俺は一つ
お前のお願い聞いたし。
なんたってお前、まだ
帰りたくないとか言うし?」
「な、なによ…」
「今から買い物、行くか」
まだ日も明るいし、断る理由もないので
街へ行こうという明日の後に続いた。