君の温もりを知る

思わず食べようとした卵焼きを、
ポトリと膝の上に落としてしまった。


「え、……え?」


購買で買ったらしい焼きそばパンを
大胆にかっ喰らって、彼はもう一度言う。


「だからもう一回言うぞ?
宮野さんを、クリスマスデートに誘え」


あくまであっけらかんと言う明日は、
ここが屋上が故に綺麗にバックになる
雲一つない青い空がよく似合う。


「いつ?」

「いまから」

「…むりむりむりむり。無理だって」

「人間ってのはなあ、限界を感じた時…」

「なんでもいいです無理です」

「てめえ、人の話を遮るたあ、
いい度胸じゃねえか」


明日の機嫌が悪いのももう慣れた。


「今までだって、
飲みかけのペットボトルを差し出したり
ボディタッチを増やしたり…
いろいろと私にやらせてきて、
これ以上私に何をさせたいの?え?
今まで好きがバレなかったのが奇跡だよ」

「俺はお前の幸せを願ってる」

「すっごい棒読みでありがとう」


私がそう言ってそっぽ向くと、
明日は私に珍しく向き直って言った。


「…別に嘘は言ってねえし。
てかなんだかんだ言って最終的に
いつもやるんだからよ、
つべこべ言わずにさっさ行けや」

「行かない!今日という今日は!」

「この前買ってやった服着るチャンス
じゃねえか。…あ、お前一人じゃ
寂しいんだな?そっか、そうだろ?
今日だけ俺が一緒に行ってやるよ」

「え、いや、あの…」


それはますますおかしなことに…

私がそう言う前に、私は弁当を片付けた
ばかりなのにすぐさま腕を引いて
屋上を後にした。
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