君の温もりを知る
「もう!また抜け出して!」
「ごめんなさーい!」
「…もう、しょうがないんだから…。
すいません。お邪魔してしまって…」
「…あ、いえ、邪魔なんかじゃないです」
横までやって来たひなと呼ばれた女の人は
「お隣失礼しますね」と言って腰掛けた。
「ええっと…」
「私、今椿くんの通ってる保育所で
専門学校に通いながら実習をしています、
瀬川日菜といいます。
ああやってよく抜け出されるので
困ってるんですよ」
(瀬川日菜…?いや、でもあれは…)
「…どうかされました?」
「いえ、何でも…」
「そうですか。おーい、椿くーん!
そろそろ行くよー!」
「…はーい」
「では、お世話になりました」
渋々やって来た椿くんを連れて、
日菜さんは去って行った。
「お疲れ様です、先輩」
相当遊んだのか、若干汗ばんだ先輩が
歩いて来たのでタオルを渡す。
「ああ、サンキュ。…吉原、今何時?」
「2時半を回ったくらいですかね?」
「は?!やべえじゃん!早く行くぞ!」
アンサンブルの公演は三時開場、
三時半開演なので、慌てた先輩は
私の背中を押して走った。