嘘つきなワタシと年下カレシ【完】
「ここが、B-3の教室だよ。勉強頑張ってね」

 私は最大級の笑顔を作ると、ヒールを鳴らしながら佐々君から離れて行った。

『M高の2年です』

 佐々君の声が頭の中でリピートする。

 佐々 煌大

『公園のカレ』から……随分と近しい関係になってしまった。

 これからは朝だけではなくて、職場でも佐々君を拝められるのかと思うとテンションがあがる。

 楽しみが一つ増えた。


 私は事務所に戻ってくると自分の椅子に座った。

 佐々君が受けるでろう授業に向かう相田先生が私がいるカウンターで足を止めると、指先で私のデスクを叩いた。

「随分と親しげだったけど、知り合い?」

「相田先生?」

「さっきの長身の子。山村さんと知り合いなの?」

「先日、鍵を落としたのを拾っただけです」

「鍵……ね」

 ふうん、と納得しきれない表情のまま、相田先生が歩き出した。

 私は黒スーツの諒の背中を見送る。

 一体、どうしたの言うのだろう。ただ教室の案内しただけ。そんなことよくあることなのに。わざわざ聞いてくるなんて。

 
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