嘘つきなワタシと年下カレシ【完】
 佐々君は入塾してから毎日のように、校内で見かける。

 授業を受けに来ているのか。自習室で勉強しに来ているのかは、わからないけれど。

 M高の制服のまま入ってきて、毎日午後9時過ぎに帰っていく。

 あっという間に塾では、人気者だ。講師たちにも、生徒たちにも。特に女子、もしくは女性たちに。

 あれだけの整った容姿でうろうろされたら、そりゃ……話題の的になる。

 私は休憩の時間を利用して、ファーストフード店で少し早目の夕食を口にする。

 滅多にファーストフードは食べない。

 学生が多いから、塾の生徒とうっかり鉢合わせ……となりかねないから。

 でも今日は財布の中身が貧しくて、ファーストフード店を選ばざるを得なくなった。

 きちんと確認してから出勤すれば良かった。

 今日は帰りに絶対に銀行に寄らないと!!

「山村先生?」

 頭上から低い声が降ってきた。

 ああ、やっぱり塾の生徒に見つかった……と気が重くなりながら顔をあげた。

「あ……佐々君!?」

 M高の制服で、ファーストフードのお盆を持って立っている佐々君を見て、私は嬉しさと恥ずかしさで胸がぐちゃぐちゃになった。

「学校帰り?」

「はい。これから塾に行こうと思いまして。その前におやつを」

 おぼんの上にのっているバーガー3個にチキン、ポテト、飲み物を見て私は目を丸くした。

「それ……おやつ!? 夕飯じゃなくて?」

「夕飯は家で食べますから。山村先生は夕飯? そんなんで足りますか?」

 私のおぼんにのっているポテトと飲み物を指さして、佐々君が不思議そうな顔をした。

 
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