嘘つきなワタシと年下カレシ【完】
「十分足りるわ。それと私は『先生』じゃないから。ただの事務員」

「じゃあ、『山村さん』って呼びますね」

 佐々君がおぼんを私の対面に置くと、「ここ、いいですか?」と座ってきた。

「お友達と食べなくていいの?」

「一人で来てますから」

 バーガーを一つ取った佐々君が丁寧に紙包みを開いた。

「一人!? 塾だと大人数で歩いてるから、みんなで約束して集まってるのかと思ってた」

「ああ。自習室にいるとなんか集まってくるんですよね」

 そりゃ、寄ってくるよ。

 格好良くて、目の保養になるもの。

 私だって学生だったら、一目散に隣の席をゲットしに行くと思う。

 端正な横顔を見ながら勉強できるなんて、嬉しいもの……あ、でもドキドキしちゃって勉強に集中できないかも。

「鍵、ありがとうございました。助かりました。あやうく豹柄の鍵を作られるところでした」

「『豹柄』!?」

 コクンと頷きながら、佐々君がバーガーを口に入れた。

「俺、よく家の鍵を無くすんです。そのたびに親が派手なのを作ってくるんですけど……さすがに豹柄はちょっと……」

 佐々君が苦笑した。

 初めて見る佐々君の苦笑。恋愛対象に見られないってわかっているのに、ドキドキしてしまう。
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