嘘つきなワタシと年下カレシ【完】
 ずるいなあ。

 苦笑しただけで、ドキドキさせられるなんて。

「豹柄はまぬがれましたけど、今はネックストラップをかけろって」

 佐々君がワイシャツの下から、緑色のストラップを見せてくれた。

「まるでカギっ子ね」

 私はクスクスと肩を揺らして笑った。

「よく俺のだってわかりましたね。あの時間って人通りが無いのに……」

「えっ!?」

 私は慌てて飲み物を手にかけると、ストローを口に入れた。

 ズズッとストローから音が鳴る。

 佐々君の真っ直ぐな視線が途端に痛くなった。

 私の返答を待っているであろう沈黙の間が、重く苦しい。呼吸困難になりそうだ。

 何か良い言い訳はないだろうか?

 通りすがり……。人通りが無いって言っているのに、その説明はおかしい。それに鍵を渡したのは落としてから一日過ぎてから。

 落としたのを見て追いかけた……なら、「通りすがり」という答えでも違和感はない。

 あそこで筋トレをやっているのを知っているからこそ、1日以上すぎてから鍵を渡せたのだ。

「山村さん?」と佐々君が、首を傾げた。

 私は飲み物を必要以上に力強くテーブルに叩きつけると、「御免なさい!!」と頭をさげた。

「え?」と佐々君が慌てた声をあげた。

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