嘘つきなワタシと年下カレシ【完】
「今日も時間ぴったり」
私(山村 まりな)はコーヒーの入ったマグカップを両手で持ちながら、ベランダのサンダルに足を引っ掛けた。
ここ最近の私のブーム……というか趣味?
部屋を借りているアパートの前にある小さな公園で早朝から筋トレを始める若者を眺めるのが日課になっている。
6時半きっかりに必ず公園にジョギングしながら入ってくる。
ジャージ上着ポケットからタオルを出すと額にうっすらと滲む汗を綺麗に拭き取り、筋トレに励む。30分ほどの筋トレメニューをこなすと、また汗を拭き取って走りだし、公園を去っていく。
それを見るのが、三か月前からの私の趣味だった。
すらりと高い身長に、無駄のない締まった身体。これぞ細マッチョと言わんばかりのスタイルだ。
さらにモデル顔負けのイケメンときたら、見ないわけにはいかない。
早起きなんて苦じゃない。
彼を見るためなら早寝だって出来ちゃう。夜更かしなんてもってのほか!!
私はベランダの手すりに両腕をのせると、湯気のたつマグカップを鼻先に持ってきた。
コーヒーの匂いが鼻孔をくすぐる。
至福の時。
温かいコーヒーに、イケメンの筋トレ姿……干からびたオトナ女子のご馳走だ。
朝から豪華なオカズをどうもありがとう、と心の中でイケメン男子にお礼を告げると、私は人目の憚らずに視線を送った。