嘘つきなワタシと年下カレシ【完】
 朝6時半。

 いつもの時間になる。

 私は厚手のカーディガンに羽織ると、恐る恐るベランダへと続く窓を開ける。

 昨日の佐々君の言葉は、言葉通りに受け取っていいものなのだろうか。

 公園に筋トレに来る佐々君の姿を見ても良いのか。

 それとも社交辞令?

 本当は見られるのは嫌だけど……通ってる塾の事務員だし……という思いがあるのだろうか。

 私に見られてるの嫌ならきっと筋トレの場所を変えるはず。

 私はサンダルには足を引っ掛けずに、顔だけひょいを外に出して公園を視界にいれる。

 時間はすでに6時半を数分すぎている。

 いつもなら、もう公園で筋トレ開始時刻。でも、佐々君の姿が無い。

 やっぱり嫌……だよね。

 私は窓の枠にコツンと後頭部をぶつけると、自嘲の笑みを浮かべた。

 期待した私が馬鹿だった。

「馬鹿……だわ、わたし」

 ぼそっと己を戒める。

 当たり前だ。3カ月も前から最近まで見ず知らずだったオバさんに見られてるなんてわかったら……気持ち悪くて公園を避けるだろう。

 しかもずっと肉体美にうっとりと目の保養してた女に、落ちた鍵を拾って渡してもらったなんて。ホラー並みの背筋が冷たくなる。

 もう関わり合いたくないと思うのが、通常の反応だろう。

 私は窓に指をかけると、顔を引っ込めようとした。

「諦めるの早すぎませんか」

 え!?

 
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