嘘つきなワタシと年下カレシ【完】
 近くから聞こえる声に驚いて私は慌てて、サンダルを引っ掛けるとベランダへと飛び出した。

 紺色のジャージに身をつつんでいる佐々君がにっこりと笑って立っていた。

「ちょ……なんで?」

「公園の前にあるアパートに住んでるって言ってましたから。どの部屋から見てるのか気になりまして」

 アパートの下で、ジャージのポケットに両手を入れて佐々君が立っている。

 信じられない。佐々君が、こっちを見てる。

 あっ!! 私、すっぴんだわ。

 私は頬をさわってから、ぼさぼさの髪の毛を急いで撫でつけた。

「こっちを見るなら、見るでちゃんと言ってよ! 用意ってものがあるのよっ」

「だろうと思いまして」と佐々君が、ポケットから手を出すと丸いモノをちょいっと投げた。

 弧を描いて、丸い物体が私のベランダへと転がり込んでくる。

 紙くず?

 ぐちゃりと丸まった紙を拾うと、私は丁寧に紙を開いた。

『080……』って携帯番号?

 数字の羅列の下に、「電話して、すぐに」という文字が書かれていた。

 私は部屋に戻ると、ベットの枕に置いてあるスマホに手を伸ばした。

 紙に書いてある番号を押してから、スマホを耳につけた。

< 22 / 41 >

この作品をシェア

pagetop