嘘つきなワタシと年下カレシ【完】
 一回にも満たない呼び出し音がブチっと切れると、「おはようございます」という低音が耳をくすぐった。

「佐々君?」

「はい。佐々です。山村さんの電話番号、ゲットできました」

「ちょ……」

 私はベッドにドスンと座ると、前髪をぐいっと引っ張った。

 鼓動が自分勝手に早く鳴る。

 十代男子は恋愛に無知すぎる。

 私だから良かったのよ。境界線にラインをひける私だから……。

 これが佐々君と同じ十代の女子だったら、もうノックアウトよ。佐々君ラブで、勘違いしちゃう。佐々君も、私を好きなんじゃないかと……間違ってしまう。

「佐々君、あのね」と私は口を開いてから、一呼吸置き、「こういうのは好きな女性が出来てからやるものよ」とできるだけ落ちついた口調を装って発言する。

 恋愛経験を佐々君よりはしているはず。

 今ここで、線引きの仕方を教えないと佐々君はきっと、好きでもない女子たちに愛を振りまいてしまう。

「『こういうの』ってなんですか?」

 ほら! もう言わんこっちゃない。

 無知な行動はおそろしいわ。こうやってイケメン男子は、たらし男子の技を心得ていくのよ。

「だからロミオとジュリエットのごとくアパートのベランダで話をしたり、窓に向かってメモ紙を投げ込んでメッセージを伝えることよ。それと本人に向かって『電話番号、ゲット』発言もダメ!!」

「なんでですか? 山村さんと話すにはこうするしか方法はないですよね? 塾だと人多いし。ゆっくり話せません」

「今の発言もダメ」

「はい?」

 
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