嘘つきなワタシと年下カレシ【完】
 十代の思考回路って、どうなってるの!?

 20代の折り返し地点を曲がって、結婚に直結する恋愛を望んでいるオトナ女子をからかってるのかしら?

「すみません。補習授業ってどの教室でやってますか?」

 聞き慣れてきた低音ボイスが、頭上から降ってくる。

 私は顔をあげると、今朝やめてと言ったばかりのにっこり笑顔で、佐々君が見ていた。

 M高の制服を軽く着崩して、鎖骨がチラリズムで見え隠れしている。

 いつもならネクタイまできちんと着用しているのに。今どき珍しいくらい、真面目に制服を規定通りに。

「その件については、他の学習塾に行くようにとお伝えしたはず」

 佐々君はカウンターに腕をのせると、ニヤッと笑って視線を私に合わせてきた。

「学習塾の掛け持ちをする気はないので、補習授業をぜひ。まりなさん」

 ちょ……!!

 意味ありげな笑みの佐々君に、私は確信をする。

 これは無知ゆえにやっている行動なんかじゃない!

 わかっててやってる。

 乙女心も乙女の心理も。

 どうやれば喜ぶか。恋愛感情を持つか。

 年上オンナに向かって、上目遣いプラス『さん』づけは反則なうえに禁句よ。

 レッドカードを3枚投げつけて、即刻退場もんよ。

「その緩んだネクタイを引っ掴んでご案内しましょうか?」

「喜んで」

 
< 25 / 41 >

この作品をシェア

pagetop