嘘つきなワタシと年下カレシ【完】
「計画的犯行により、逮捕決定。ここでは手に負えないわ」

 佐々君がクスクスと肩を揺らして笑う。

「今度は警察プレイ? 女刑事に犯罪者も悪くないですね」

 私はカウンターにのっている佐々君の手の甲をぐいっと抓った。

「オトナ女子をからかわないの!! 私だから冗談が通じるのよ。いい加減にやめなさい」

「始めたのはまりなさんでしょ? ごっこプレイ」

「頭を殴られたい?」

「痛くしなでください。俺、初体験なんです」

「こら!」

 佐々君はニヤッと笑って、私の指に手を軽く絡めてから、カウンターを離れて行った。

 十代男子……おそるべし。

 意外とオトナ思考が備わっている。

『ごっこプレイ』って……。どこでそんな言葉を覚えてくるのかしら!!

 私が十代のときは知らなかったわ。

 てか……男の心理なんて心得てなかったし。

「佐々 煌大」

 ぼそっと背後で声が聞こえて、私は振り返った。

 グレーのスーツ姿の諒が、コーヒーが入ったマグカップを持ったまま、自習室のほうをじっと見ている。

「佐々君がどうかしたんですか、相田先生」

 私はドキリと跳ねあがった心臓を抑え込んで、諒の薬指に視線が落ちた。

 シルバーのリング。

 諒の結婚指輪を見るたびに、いつも胸が苦しくて息が詰まった。

 今日は、自然に呼吸ができる。

 佐々君のごっこ遊びのおかげかな?

< 26 / 41 >

この作品をシェア

pagetop