嘘つきなワタシと年下カレシ【完】
「佐々、補習がどうとかって……。あいつ、成績優秀で補習なんて必要ないけど?」

 ちらりと私に視線を落とした。

 ズキリと私の胸が痛む。

 私に何を言わせたいのだろう?

「わ……私にはよくわからないわ。だってほら、私は事務員だから。講師じゃないもの。佐々君の成績がどうかなんて。ただ補習授業について聞かれたから、今日はそういう予定はないって答えただけ」

 諒の言葉は刃のように突き刺さる。

 痛すぎて、答えにくい。

 佐々君の言葉は痛くない。冗談もさらりと交わせるのに。

 諒には、冗談の一つも出てこない。

「きっと勉強が好きなのね」

 私はくるっと椅子を動かして、諒に背を向けた。

「そういう会話だったっけ?」

 諒は腰を折ると、私の耳に口を寄せた。

「ちょ……やめてよ」

 私は諒の胸を押すと、喉を鳴らす。

「不倫の次は、9歳も年下の男? こんなふうに指を絡めて……」

 デスクの下で、諒が私の指に手を絡めてくる。

 私は身体がカチコチに固まる。ごくりと生唾を飲み込むと、下を向いた。

「だから、違うって」

「まりなはイケナイ恋愛が好きなんだな」

 諒が耳元で囁くと、スッと離れて行った。

 ぎゅっと唇を噛みしめると、瞼を固く閉じた。

 やめて。諒の言葉は……ナイフと同じよ。

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