嘘つきなワタシと年下カレシ【完】
◇煌大side◇

 相田先生がまりなさんから離れるなり、まりなさんが身体を小さく丸めた。

 瞼を閉じて、流れ出そうになる涙を必死に堪えてるみたいだ。

 俺は二人から視線を外すと、舌打ちをした。

 緩めたワイシャツのボタンを留め、ネクタイの緩みを直す。

 ああいう男は嫌いだ。

 男の振る舞いは、女性の心を如何様にも動かせしてしまう。

 バラ色にしたり、闇の底に突き落としたり。

 あいつの行動は、闇の底にまりなさんを突き落としている。許せない。

 もっと女性に敬意を払い、温かく優しく包み込むべきだろ。男はそういう存在なはずなのに。

「俺がもっと……」

 年齢が上だったら。

 どうにもできない年齢の差を疎ましく思う。

 まりなさんと同年代で、同じ職場だったら。俺は相田先生を、ぶん殴れたのに。

 教師と生徒じゃあ……俺の立場が弱すぎる。

 俺は教科書のページを捲ると、左手に握っているシャーペンを放り投げた。

 
< 28 / 41 >

この作品をシェア

pagetop