嘘つきなワタシと年下カレシ【完】
「私と佐々君の間には、分厚いガラスがあるの。佐々君が言うように私は、佐々君に惹かれてる。たぶん、好きなんだと思う。それでも佐々君のその胸には飛び込めない。ガラスがあるから。佐々君がくっきり見えてるのに、ガラスがあるの」

「相田先生とまりなさんの間には、そのガラスは無いと?」

「ええ。ないわ」

「倫理観や世間体を無視しているのに、そこにはガラスは無いと? 年の差がネックってだけの俺たちにはガラスがあるのに?」

「昔はあった……と思う。でも今は無い」

 佐々君が、下唇をぎゅっと噛みしめた。

 手におしるこを持ったまま、私に背を向けると自習室に戻っていく。

 私も缶コーヒーをぎゅっと握りしめると、事務所に足を進めた。

 自習室の声が漏れてくる。

『なんでおしるこ?』

『間違って押したんだ』

『煌大君って、甘いの平気なんだあ』

 女子たちの甘く幸せそうな声が耳に入る。

 私も同年代だったなら。あそこの席で一緒に、佐々君と勉強できたかな?

 
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