嘘つきなワタシと年下カレシ【完】
 夜10時前。

 アパートに戻ってくると、玄関前でうずくまっている影があった。

「佐々君!?」

 私は影の正体がわかると、小走りで玄関へと走っていく。

「何してるの。まだ制服姿じゃない。家に帰ってないの?」

 小鼻が赤くなっている佐々君が顔をあげる。

「友達の家で勉強会だって親には言ってあるから平気。それよりもまりなさんと話をしたくて」

 うずくまっていた佐々君が、立ち上がった。

 どれくらいここで待っていたのだろうか?

 制服の袖口にそっと触れる。氷のように冷たかった。

「とりあえず部屋に入って。温かくしないと風邪ひいちゃう!!」

 私は慌てて鞄から鍵を取り出すと、鍵穴に差し込んだ。

「俺、ハンマーでたたき割ろうと思って」

「は?」

 私は玄関のドアを数センチ開けたところで、動きを止めた。

「自販機で話してた俺との間にあるガラス。割りにきた」

 佐々君が私の後ろに立つと、覆いかぶさるように抱きついてきた。

 ドアノブにある手も、佐々君の大きな手で覆われる。

「昔はあったんだよね? 相田先生との間にもガラスが。でもどちらかが割ってしまった。なら俺たちの間にあるガラスは俺が割る。粉々になるまで叩き割るよ」

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