嘘つきなワタシと年下カレシ【完】
「相田先生に何か言われた?」

 学校を終えて塾に来た佐々君が、真っ直ぐに私の前までくると声をかけてきた。

「え?」

「コピー機の前でただならぬ空気だったから」

「首の後ろにあった虫刺されを指摘されたのよ」

「虫さされ? ……あ、ああ。かまかけられたんだね」

 佐々君がにっこりと笑う。

「はい?」

「昨日と全然違うから。まりなさんの雰囲気がさ。相田先生が怪しむのも無理はない。可愛いよ、まりなさん」

 佐々君の言葉に、私は顔が真っ赤になる。

『可愛い』なんて……年上の女に言うものじゃない!!

 恥ずかしくて、燃え上がりそうだ。




 3カ月前に、公園で見かけた筋トレ男子だった佐々君。

 ただ見ているだけで良かった。

 それだけで十分、幸せをもらえていた。

 

 それが私の彼氏になるなんて。夢のようだ。

 佐々君の真っ直ぐで熱い想いに感謝しなくちゃね。


 今度は、私が言うから。


『佐々君、格好良いね』って。

 好きだよ、って佐々君に伝えたい。












『嘘つきなワタシと年下カレシ』―了―

 読んでいただき、ありがとうございました。
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