嘘つきなワタシと年下カレシ【完】
午前6時半。
私はいつもと同じ朝を迎えた。淹れたのコーヒーを片手に、ベランダに出る。
手すりに腕をのせて、コーヒーの匂いに酔い知れながら、目の保養をした。
彼はいったいどんな人生を送っているのだろう。
甘くとろけそうな恋愛の最中なのだろうか。
それともピリ辛で刺激的な恋愛?
女子にモテ過ぎて、二股とか。それとも彼女を別れたばかり、とか。
整った顔から想像してしまう。
彼女に甘える彼の表情を……。そして勝手なストーリーが昼ドラ風に脳内で流れ始める。
彼がポケットからタオルを出そうとする。
あ、もう帰る時間?
彼のポケットからキラリと何かが落ちていくのが見えた。
彼は落としたものに気付かずに、タオルで汗を拭うとポケットにしまって走りだした。
「ちょっと……」
って、ここから叫ぶわけにはいかないよね。
何を落としたんだろう?
私はベランダから室内に入ると、ロングコートに袖を通して部屋を飛び出した。
明日も必ず彼は来る。
私が拾って渡してあげよう。