嘘つきなワタシと年下カレシ【完】
私は仕事をしながら、手のなかにあるものに視線を落とした。
きらりと光るゴールドの鍵。
どこの鍵? ってか、本当に彼の落としモノであっているだろう?
公園に遊びにきている子どもの落としモノ、かもしれない。
もし、彼の落としモノなら……。
イケメン男子と話せるチャンスが巡ってくる。どんな声をしているのだろうか? どんな口調なのだろうか?
「馬鹿ね。過度な期待は己をほろぼすだけ」
私はクスッと鼻を鳴らすと、鍵をスーツのポケットしまった。
「山村さん、こんちはーす。相田っち、いる?」
学習塾の事務所にズカズカと入ってきた男子高生が、ジェルでかためたと思しき髪を整えながらカウンターを覗きこんできた。
「相田先生は今、授業中。あと10分で終わるはずだけど」
「うぃーっす。んじゃ、またそんころに来るわ」
男子高校生は、片手をあげるとまた自動ドアを通りぬけて外へと出て行った。
外の歩道では、男子高校生の友人数人が輪になっていた。
手に持っている教科書を鞄の中に捻じ込むと、隣のコンビニへとぞろぞろと入っていくのが見えた。
毎朝、公園にくる彼もああいう感じで話すのかな?
きっと同じ年代だと思うけど……。