【完】恋のキューピットは山田君!
だけどどうしても、先輩が妬くとは考え
にくい。
そして、実行の時はやって来た。
「──美姫さん」
部活中、先輩の隣で、先輩と話しながら
稽古を行っていると、不意に、やけに甘
ったるい声が耳朶を撫でた。
その声に思わずビクリと肩を震わせたと
き、するり、と私の手に、誰かの手が重
ねられて。
「あんまり集中出来てないみたいだね?
僕が手取り足取り、指導して差し上げま
すよ」
クスッと微かに笑ったそれを確認すると
、それは妖艶に微笑む山田君だった。
「なっ……!?」
山田君は、私を後ろから抱き締めるよう
な格好で、私の手に、手を重ねていた。
女子が後ろで、声にならない悲鳴をあげ
ているのが聞こえる。
先輩も、驚いたように目を見開いていた
。