恋華火
*絶望からの光

「夏美、またあとでな」
そう言って先に家を出た彼、新見涼
私、相田夏美の同棲相手で大好きな彼氏。
今日は12月24日、クリスマスイブ。
この後、待ち合わせしてデートするんだっ
「あ!あと30分だっ!準備しなくちゃ♪」
いつもより丁寧にメイクして
いつもより丁寧に髪を巻く。
ふわふわのワンピースにデニムのジャケットを着て、
涼にもらったネックレスをつける。
「可愛いっていってくれるかなぁ」
玄関の鏡を見ながら全身チェック。
…うん。大丈夫。
そして私は家を出た。
本当は同棲してるから一緒に出てもいいんだけど
クリスマスイブだもんね
いつもと違うことがしてみたかったんだっ

待ち合わせは駅前の広場
やっぱりクリスマスイブだから、人が多いなぁ
午後6時前の広場なんて、いつもは1人も人がいないのに
私はそこら辺にあったベンチに座った。
早く来ないかなぁ…
足をブラブラさせながらキョロキョロする
プルルルルル、プルルルルル、
「え?電話? 」
私はカバンからピンクの携帯を取り出して
電話に出た。
「もしもし、涼?いまど…」
今どこ?
そう聞こうとしたけど、突然頭に激痛が走り
私の意識はそこで途絶えた。

「…んっ…」
何…?頭がずきずきする
ここ…どこだろぅ?
あたりを見渡すとパイプやダンボールがたくさん
置いてある。
暗くて、よく見えないけど…誰か…いる?
体、動かない
重い、何で…?
「あっれぇ?起きたぁ?」
私の顔をのぞき込む茶髪の男。
…誰?
「涼〜起きてるよぉ」
涼?何で?どうゆうこと?
意味がわからないよ…ねぇ、助けてよ…
「ほんとだ。死んでなくてよかった」
そう言って私の顔を見てげらげら笑い出す涼。
涼の後ろには3.4人の男の人。
「りょ、う…なんで…?」
「あ〜ぁあ泣かしちゃったぁ」
いくら馬鹿な私でもこの状況がどうゆうことなのか
わかった。
怖い…
考えれば考えるほど涙が出てくる。
あ、私…涼に裏切られたんだ、って
「知るか。後はご自由に。設楽行くぞ」
ひらひら手を振って私の視界からいなくなった
涼と茶髪の設楽って呼ばれてた人。
しばらくしてばたんっと無機質な重そうな扉が締まる音がした。
「かわいそ、涼さんに捨てられて」
「でも、俺らが可愛がってやるからなあ」
「そーだぜ、仕方ねぇから慰めてやるよ 」
げらげら笑う男の人たち。
あぁ、犯されるんだ。
男たちがうつぶせに倒れていた私の体を
仰向けにして服を脱がしていく。
「や、やめてっ...」
でも、私の声なんて誰も聞いてくれなくて
「泣き顔なんてそそるなぁー」
そう言って私にキスする。
体が動かしたくても全然動かなくて、まるで体中が麻痺してるみたい。
男たちは私の体を触り始める。
やめてよ…涼っ、助けて。
「…あっ…やめ…っ…ひっ…あぁぁあぁ」
ズブズブと男の汚い何かが私の中に入ってくる
痛い、汚い、怖い…
そして、私の無抵抗な体は男たちによって
穢された。

男の人たちが眠る中、私はびりびりに破れた服のままその場から逃げ出した。
怖くて、怖くて、怖くて、早くそこから逃げたくて
真夜中で周りがとても静まった暗い倉庫が沢山ある道を私は走った。
目的地なんてない。
ただ、そこからできるだけ離れたかったんだ。

「海…?」
私が走りついたそこは海だった。
そっか。海沿いの倉庫にいたんだ。
砂浜に降りてぼーっと海を眺める。
少しずつ冷えていく頭の中でさっきの出来事が
何度も何度も頭の中でリピートされる。
私、涼に裏切られた。
私には涼しかいなかったのに。
今日、楽しみにしてたのに。
髪も、メイクも涙でぐちゃぐちゃになっていた。
…なんか、バカみたい。
じわりと涙がにじむ
視界がぼやける
「…っうぅっ…ぐずっ、うぅー…」
大粒の涙が私の頬を流れ落ちる
とめたくても、とまらなくて
私はしばらく無人の砂浜で泣き続けた。

しばらくして私は冷静になった。
私、どうしよう…
私の親は6年前交通事故で死んだ。
一応親戚の家に引き取られたけど邪魔もの扱いされていた。
唯一の救いだった涼にも裏切られた。
「死のう…」
帰る場所がない、守ってくれる人がいない。
もう、私には生きる意味なんてないんだ。
私の中には絶望感しかなかった。
砂浜に降りて岩とかでゴツゴツした方へと歩く
そこは随分高くて、飛び降りたら絶対助からなさそうな場所だった。
ここから、飛び降りれば…
「…寒い」
冬なのにこんなビリビリな服で、裸足で走ったから
風邪ひいたのかも…。
この下には海がある
あと、何歩か歩いたら…
私は一歩一歩そこに近づいていく。
未練なんてなかった。
ただ、この状況から逃げたくて、楽になりたくて…
ふらっ…と私の体が傾いた…その時
「おい」
ピタッと体が止まる。
「何やってんの?」
後ろを向くとそこには明るい茶色い髪をして、学生服を着た男の人が、少し離れた岩場に座っていた。
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