恋華火
*新しい居場所

「…何」
私はそっけなく返した。
早く、死なせて…
「お前、死ぬのかよ?」
そう言うと男の人はよっ、と立ち上がり近づいてくる
「…こないで…関係ないでしょ」
きっ、と睨む。
「なぁ、理由は?」
うるさいうるさいうるさいうるさい…
こないで…
男の人はひらりと飛んで私のいるところまで来た。
さらさらとそのやわらかそうな髪が風になびく。
私のキャラメル色をした髪も男の人の方になびく。
「…泣いてんの?」
涙…?何で…?
はらりはらりと落ちていく涙。
男の人がまた一歩、近づいてきた。
その意志の強そうな目が私を見る。
「俺さ、日向真央。なぁ、話そ?」
そう言って男の人…真央は私に手を伸ばした。
「…うん。」
おっけいってにかって笑う真央につられて、
私は真央の手を取った。

「…で、今に至るわけ…です」
私はすべてを話した。
真央はまとまりのない私の話を最後まで聞いてくれた
「そっか。つらかったんだな」
下をむいていた私の頭をぽんぽんと撫でてくる真央。
「でもな、人生まだまだ長いんだ。生きていれば居場所も幸せも必ず来る。」
まっすぐ海を見つめながら力強く言った。
必ず...
私にも、くる...?
「居場所がねぇなら…」
「…えっ?」
ふわっとわたしは真央に抱きしめられた。
「俺のとこにいろ」
俺のとこ?
真央の所に?
…あったかいな。
私も何故か真央の背中に手を伸ばした。
きゅっと抱きしめ返す。
「…うん」
あったかくて気持ちいい
私も、幸せになれるんだ。
真央、気づかせてくれてありがとう。

私は言葉にはしなかったけど、心の中で
真央にお礼を言った。

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