唯一の涙

男達は全部で六人。
あっという間に私と紀衣は囲まれた。



太い腕が、私と紀衣を掴む。
触られた瞬間、全身に鳥肌が立った。



「離して下さいっ‼人呼びますよっ‼‼」



紀衣が一人の男を睨み付けた。
だけど、男達はニヤニヤと気味の悪い笑顔を浮かべたままだ。



一人とかなら股間蹴って終わるのに…六人は厄介だ。
しかも紀衣だっている。



どうするかと考えていると、一人の男が顔を歪ませた。
糸が切れたかのように膝から崩れ落ちる男。



「すみません先輩、その子達返してもらっていいですか」



「あ……」



水野先輩だ…。何で?



某然と立ち尽くしていると、三年生たちは舌打ちをして何処かへ去って行った。
倒れた男の人も慌てて後を追う。



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