唯一の涙
送別会
「全員ドリンク持ったなー?……じゃ、乾杯の音頭を我が顧問、藤堂先生に御願いします」
ここは白石先輩の家が経営している喫茶店White Stone。
決勝戦から二日経った今日、送別会を開く事になった。
キャプテンの名瀬先輩に促され、部屋の隅でいた藤堂先生が、前に出てくる。
先生は咳払いを一つすると、烏龍茶の入ったコップを高々と上げた。
「乾杯‼」
「「「乾杯ーー‼‼」」」
何時間にも及ぶ送別会の始まりだ。
「河原ちゃん!楽しんどるぅ?」
「っん”‼‼⁉」
今日も元気いっぱいの白石先輩が、肩に顔を乗せてきた。
毎回、突然すぎる先輩の登場は、心臓に悪い。
もうちょっとで飲んでたジュース噴き出すとこだったじゃん……。
危ない危ない。
「白石先輩…次飛びついてきたら、怒りますからね」
先輩の額を軽く小突いて、コップをテーブルに置く。
そう言えば、水野先輩どこだろ。
キョロキョロと辺りを見回す。
「いた……」
騒ぎの輪から離れた場所に、先輩はいた。
誰かと、話してる?あっ、あれって石神先輩かな?
後ろ姿だけど、多分間違いない。
「…れ…何も……ぃ。でも………から」
「君って………だよ……ね。いや、………、か」