唯一の涙
タイムリミット
「それじゃっ、うちのクラスは縁日に決定ということで!今から担当決めていきまーす‼」
季節は秋。
つまり文化祭まで、あと一ヶ月。
うちのクラスは多数決で、縁日をすることになった。
屋台は、かき氷、たい焼き、チョコバナナ、射的、スーパボールすくい。
こんなにやって経費は大丈夫か……と思うけど、紀衣のことだ。
上手くやるんだろうな。
「はーい、女子全員浴衣がいいと思いまーす‼‼」
一人の男子がそう言うと、周りの男子も頷き出す。
女子は女子で、『やだ〜』とか『面倒くさ〜』とか言ってるけど、顔がノリノリ。
これ、絶対言われなくても着る気だった……。
「でもさ、着付けどうするの?浴衣だと髪型も考えなきゃだし……」
私がそう呟くと、教室中がシンーーと静まった。
皆、苦い顔をしている。
なんだか、言ってはいけないことを言ってしまった気分。
空気が、痛い……。
太腿の上で手を握りしめた時、ガタン……と誰かが席を立った。
皆の視線が、一点に集まる。
視線を集めるのは、このクラスのムードメーカ、小山くんだった。
「俺、髪型アレンジしてやるよ……だから」
彼の眼が、私を捕らえた。
視線が絡み合った瞬間、小山くんは不敵な笑みを浮かべる。
「河原、着付けはお前がやれ」