唯一の涙
「大丈夫か、何かされた?」
「いいえ、有り難うございました」
紀衣が頭を下げたのを見て、私も続く。
男の子にしては低い身長。160前半だろうか、先輩には見えなかった。
いつも遠くからだから、身長まで分からなかったんだよね。
「多分もう集会始まっただろうから、今日は三人でサボるか。今入っても、注目浴びるだけだろうし」
「えっ、良いんですか、サボっても?後で先生に怒られるんじゃ……」
私も紀衣も俗に言う真面目っ子。
授業やらなんやらをサボったことはなかったから、【サボる】という言葉には抵抗がある。
「大丈夫だろ、俺がなんとか誤魔化すし。…それに俺、こう見えて生徒会役員なんだ。なんとでも言い訳は付くさ」
人懐っこい笑みを浮かべると、体育館の裏に案内された。
勧められるままに、腰を降ろす。
水野先輩も一人分開けて、私の隣に座った。