唯一の涙
*******
「河原……こいつは瞬【しゅん】。俺の従兄弟で隣町に住んでるんだ」
五分後、リビングに戻ってきた水野先輩によって、そっくりさんの紹介をしてもらった。
「初めまして…河原和歌です」
「どーも。気軽に瞬でいいよ」
爽やかな笑顔を向けるそっくりさん……じゃない…瞬さん。
ほんと、よく似てるな二人って。双子って言っても、通るんじゃないかな。
水野先輩曰く、よくご飯目当てに来るんだとか。
先輩より一つ歳上で高校三年生。
「しっかし……夏希に彼女がいたなんてなぁ。正直ビックリだよ。和歌ちゃん?…だっけ…文句無しに可愛いし」
そう良いながら、瞬さんは紅茶を一口飲んだ。
私と先輩はと言うと、瞬さんの言葉に照れたまま下を向いている。
「んで、おばさんは?僕お腹空いてるんだけど……」
「多分、買い物。今朝スーパーのチラシみて騒いでたから」
スーパーのチラシ……。
そう言えば今日、ジャガイモの得売りじゃん‼
しまった、忘れてたよ。買い損じちゃったな……。
「ごめんな、河原。母さん帰って来たら着付け教えてやるように、ちゃんと頼むから」
耳元で先輩は囁いた。
それにちょっぴりドキッとする。
「着付け?夏希、何それ」
私と先輩の間に、ヌッと顔を出した瞬さんに、私達は驚く。
「あー、実はさ」
先輩は片頬を引き攣らせながら、話し出した。