唯一の涙

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「河原……こいつは瞬【しゅん】。俺の従兄弟で隣町に住んでるんだ」



五分後、リビングに戻ってきた水野先輩によって、そっくりさんの紹介をしてもらった。



「初めまして…河原和歌です」



「どーも。気軽に瞬でいいよ」



爽やかな笑顔を向けるそっくりさん……じゃない…瞬さん。
ほんと、よく似てるな二人って。双子って言っても、通るんじゃないかな。



水野先輩曰く、よくご飯目当てに来るんだとか。
先輩より一つ歳上で高校三年生。



「しっかし……夏希に彼女がいたなんてなぁ。正直ビックリだよ。和歌ちゃん?…だっけ…文句無しに可愛いし」



そう良いながら、瞬さんは紅茶を一口飲んだ。
私と先輩はと言うと、瞬さんの言葉に照れたまま下を向いている。



「んで、おばさんは?僕お腹空いてるんだけど……」



「多分、買い物。今朝スーパーのチラシみて騒いでたから」



スーパーのチラシ……。
そう言えば今日、ジャガイモの得売りじゃん‼



しまった、忘れてたよ。買い損じちゃったな……。



「ごめんな、河原。母さん帰って来たら着付け教えてやるように、ちゃんと頼むから」



耳元で先輩は囁いた。
それにちょっぴりドキッとする。



「着付け?夏希、何それ」



私と先輩の間に、ヌッと顔を出した瞬さんに、私達は驚く。



「あー、実はさ」



先輩は片頬を引き攣らせながら、話し出した。










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