唯一の涙
ドアに手を掛けると、私はスッと瞼を閉じた。
水野先輩から転校の話を聞いたあの日から、私の中で何かが変わり始めた。
勉強してても、大好きな部活をしてても、友達のはしゃいでいる時も感じられるほど、確かな変化。
日増しに大きくなっていく、それ。
今まで変に恐がって、確かめようともしなかった、私の本音。
それが今、瞬さんの手によってこじ開けられた。
開いたのが、会ったばっかりの瞬さんっていうのが、ちょっと癪だけど……。
きっとこれが、瞬さんと私の運命だったんだろうな。
「私は……水野先輩を待ち続けます。誰に、何と言われようと、この気持ちは変わらない……変えられないんです」
だって……
「先輩のことが、好きだから。誰よりも、大好きなんです……」
少しクサい台詞だったかもしれない。
でも、本心だった。
嘘偽りない、私の言葉。
敢えて心の奥底に閉じ込めて、孤立させていた気持ちが堰を切ったかのように溢れ出し、ゆっくりと私の中で溶けていった。
心の中で一つになった今、私の一部としてこれからの先を共に生き続けるだろう。
そう思うと、胸が温かくなった。
「そっか……」
瞬さんは納得したように呟くと、それ以上何も喋らなかった。