唯一の涙
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「ーーあらあらっ〜!!夏希に彼女が出来たって話っ、本当だったの〜。初めまして〜、私、夏希の母の茜です〜」
茶髪の髪をした穏和な感じの人が、私の手を取った。
艶のいい丸い顔をしたこの人が、夏希先輩のお母さん……。
私は、いつの間にか自分の母親と重ね合わせていた。
今頃、海外でバリバリやってるんだろうな。
きっと仕事が忙しくて、それでも充実した毎日を送っているんだろう。
私のことを気にも留めないぐらい……。
夏希先輩のお母さんとうちのお母さんは、似ても似つかない。
外見だって、性格だって正反対。
だけど、雰囲気……というのか、オーラが同じなんだ。
母親特有の、優しい空気を漂わせてるんだ。
だからなんだ。
こんなにも懐かしいと感じるのは……。
「河原 和歌です。水野……夏希先輩にはお世話になってます」
「良いのよ〜そんなに畏まらなくてもっ!!夕飯食べて行ってね」
水野先輩のお母さん……基、茜さんは私の肩を叩くと、身を翻してキッチンへ戻って行ってしまった。
「母さん、煩くなかったか?」
水野先輩が眉を寄せながら言った。
私は、フルフルと首を振る。
「良い人ですね。それに先輩とよく似てる……」