唯一の涙
「上手く言えないけど……自分を好きになってくれて、ちゃんと言葉にして伝えてくれたんだもん。苦しいけど……嫌だなんて思ってないよ」
私はクルリと踵で回ると、真っ正面から小山くんを見つめた。
彼と私の視線が絡んで、少し恥ずかしい。
でも、逸らしたいなんて、そんな気にはならなかった。
「私を好きになってくれて、ありがとう」
「河原…」
少し見開かれた眼。
私は最後に精一杯の笑顔を小山くんに向けると、先輩の待つ校門へ歩いて行った。
これが私の選んだ道なんだ。
迷いなんてないんだ。
背筋をピンと伸ばして、私は一歩一歩確実に踏み締めた。
この気持ちのまま、先輩に逢いたい。
早まる鼓動、速まる歩調。
私は息を弾ませて、走った。
「先輩……!!」
私がそう言ったら、必ず貴方は振り返って、私の大好きな笑顔を見せてくれる。
「遅いぞ、河原」
ほら、やっぱり。
「片付けそんなに大変だったのか?」
ねぇ、先輩。
今度、私の話を聞いてくれませんか?
上手く言葉に出来るか分からないけれど、先輩に言っておきたいんだ。
話の途中で、泣いてしまうかもしれない。
それでも、話したい。
そして、話し終わった時、大好きな笑顔を浮かべてくれませんか……。
それだけで私は、この先何があっても、先輩を思い続ける事ができると信じているから……。