唯一の涙
下校
集会が終わったのを見計らって私達は教室に戻った。
いつ先生に呼び出されるのかってビクビクしてたけど、結局何もないまま、下校時間を告げるチャイムが教室に鳴り響く。
「やっぱ水野先輩が上手くやってくれたんだ。あの人、結構いい人じゃん?」
教科書類を鞄に詰め込みながら、紀衣が言った。
「そうだね。……紀衣、今日は部活だったよね?私、帰るから、じゃね」
グラウンド使えないから、今日は野球部も練習休みだし。
「んー」
「じゃーね」
あれ……?
校門の辺りで、私は立ち止まった。
私の視線の先にいるのは、水野先輩。先輩の眼は真っ直ぐ私に向けられている。
「一人?」
「はい。先輩こそ、一人なんですか?」
先輩は距離を詰めると、笑って頷いた。
「一緒に帰ろうと思って、待ち伏せてた。なぁ、帰ろうぜ」
帰ろうぜ…って。もう歩きだしてるじゃない。
私の返事、聞く気全然ないみたいだし。