唯一の涙
テレビの前では奏ちゃんが、色違いのコントローラを握って、私にキラキラした眼差しを向けてくる。
うっ、私ってばそういう眼に弱いんだよね。
「いいよ。でも私、そのゲーム得意だからね」
ちびっこ相手でも容赦なし。
獅子は兎を追う時も全力を尽くすってものよ。
コントローラを受け取ると、私は空くんに引かれるままテレビの前に座った。
「よいしょっ」
「……」
空くん、君はなぜ私の膝の上に乗るのかな?
私の膝は君の椅子なんかじゃないのだが……。
「えへへっ、和歌ねーちゃん」
「ん?」
まっ、いいや。
可愛いは正義。可愛い空くんなら、何をしても許される。
私は空くんの頭を一撫でして、画面に眼を向けた。
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「もぉぉぉぉお!!和歌さん強過ぎっ、全然敵わないんだけど!?」
サンドバックか何かと間違えているのか、ピンクのクッションは奏ちゃんのパンチを受け止めていた。
「かっけぇ、和歌ねーちゃん!!すっげぇ、大人気ないしっ」
「……」
空くん、褒めるのか貶すのかどっちかにしようか。
なんか複雑な心境だよ、私。