唯一の涙

母さんのこと。父さんのこと。ばあちゃんのこと。
仕事のこと。学校のこと。


全部話してしまった。


こんなに家の事を詳しく教えたのは、初めてかもしれない。


驚いた。


私にこんなに話させた、茜さんに。
家族ではない他人に……誰かに全部話してしまった、わたし自身に。


全部話し終えた時、変な爽快感が胸の奥底から込み上げた。
重かった肩が、一瞬のうちに軽くなる。


「そっか……和歌ちゃんちにも色々あるのね。」


茜さんは最後の一口を飲むと、どこからか一冊のアルバムを取り出して、私の前に置いた。
開けてみろとばかりに、茜さんがアルバムを指す。


茜さんに促され、私はアルバムを一頁開いた。


「……綺麗」


アルバムの写真を見て感じるのは、その言葉だけ。
それ以外、言葉が当て嵌まらない。


私はまた、一頁、一頁と進めていく。


幼稚園の入学式だろうか、男の子と女の子が仲良さげに手を繋いでいる。


運動会かな、一位のメダルを貰って嬉しそうにピースを向けている。


アニメのキャラクターかな?両手いっぱいにお菓子を持っているから、ハロウィーンの時のものだろう。


それからクリスマス、お正月、節分、雛祭り……。
行事事以外にも、沢山の写真が納められていた。


最後のページには卒園式の写真と、綺麗な字で【小学生編へ続く】と書いて終わっていた。


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