唯一の涙

「おーい、河原…置いてくぞ」



「はぁーい」



まぁ……いいか。
一緒に帰るくらい何でもないしょ?



「あのさ……」



五分くらい無言だった先輩が、数歩先で立ち止まった。
顔だけで、私を振り返る。



「野球部のマネージャーして欲しいんだけど」


先輩の出した言葉は単純だった。
だけど、理解出来ない。



「…はぃ?」



聞き返した。



何で?私が?マネージャー?
あまりに唐突過ぎて、思考回路がプツンと切れた。……ような気がする。



えっと……



1.先輩とは今日初めて話しました。
2.校門で待ち伏せされて、一緒に帰る事になりました。
3.マネージャーをして欲しい??



意味が分からない。



「集会、俺らサボっただろ?その言い訳で俺、つい先生に『野球部のマネージャー候補と話してました』って……おい、聞いてんの?」



紀衣……私、先輩はいい人って言ったあんたの言葉に頷いたけど、撤回してもいい?
この人…最悪!!



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