唯一の涙

天使の笑顔を向けられたら、私も『はい』と頷くしかない。
私に限らず、ここで頷かない人なんていないって。


めちゃめちゃ可愛いし。
なんか猫耳見えるし、尻尾フリフリしてるしっ。


断るとか、絶対無理!!


「河原、あとで話あるから」


「……っ」


耳元で囁いて、先輩はリビングを去った。


「和歌ねーちゃん、早くしてよ〜」


「あ、うん。ごめんごめん」


お願いだから、耳元で囁かないで。
くすぐったいし、恥ずかしい。


それに不意打ちとか……心臓止まるかと思ったし。


クセのある空くんの髪を乾かしながら考えるのは、先輩のこと。


先輩もくせ毛なのかな……とか、こんな香りのシャンプー使ってるんだ……とか。
新しい発見が、新鮮で、心を高ぶらせる。


「もう良いよ。大体乾いたし、もう遅いから早く部屋に行って寝ておいで」


「いいよー、どうせ明日も休みだし。それよりっ、もっと和歌ねーちゃんと遊ぶ‼」


あわわわわ。


シャツを引っ張らないで、空くん。
これ君んちのシャツだし、伸びちゃったら茜さんに雷落とされるって。




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