唯一の涙

私の元に近づいて来た先輩は、固まっている私の顔を覗き込む。
それで先輩が何を思ったのかは知らない。



先輩は、何事もなかったかのように言葉を続けた。



「一番不味いのが、俺がその話をした先生。聞いて驚くな、その先生は野球部顧問兼、生徒指導担当の藤堂だ」



!!



ああ…私、終わったな。よりにもよって藤堂先生だなんて。



藤堂先生。本名は、藤堂 健二【とうどう けんじ】。



保健体育の先生で学校一厳しいので有名だ。
昔はかなりの悪だったらしく、顔もヤンキー顔負けの厳つさだった。



「本当、悪かった。あんなこと言っておいて、こんな結果になるなんてさ……。でも、俺の言いたい事分かるよな?もうお前に拒否権はない。野球部のマネージャーになってくれ」



「……」



マジですか……。



私は、もう乾いた笑みしか浮かべられなかった。



「……よろしくお願いします……」



「お前の顔と台詞、合ってない気がする、俺」



私もそう思います、先輩。
大丈夫、私も自分に引いてるから。



「じゃぁ、これからよろしくな?」



こうして私は、野球部のマネージャーになりましたとさ。



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