唯一の涙

バレンタインデー。
紀衣と作ったケーキを先輩は残さずに食べてくれた。



ホワイトデーにくれたブレスレット、大切にしてるよ。
キラリと輝くのは、私の誕生石。



覚えててくれたんだね、先輩。



ありがとう。



ありがとう。



私ね、先輩と会えて良かった。
こんな気持ちになれるなら、恋をするのも悪くないって思えたから。



先輩は遠くに行ってしまうけど、私と過ごした時間が、きっと。



私と先輩を繋いでくれるよね。



「ーーーーーー」



呟いた言葉は、風によっていとも簡単に掻き消された。
でも、あの言葉はきっと届くだろう。



もう寝よう。
先輩との約束の時間まで、もう少しだ。



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