唯一の涙

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「今日から野球部マネージャーになった河原 和歌だ。河原、前に出て一言挨拶しなさい」



野球部顧問の藤堂先生が、横目で私を見る。
たくさんの視線を浴びながら、私はおずおずと一歩前に歩み出た。



握り締めた手は、冷や汗が滲み、頭の中は真っ白だった。



「一年の河原 和歌です。皆さんの役に立てるよう、頑張ります…よろしくお願いします」



小学生並みのスピーチ。
だけど、パニクった私にとっては、精一杯の言葉だった。



「よし…お前らは各自基礎練に戻ってくれ。それと、河原…お前はここに残れ」



「…えっ?」



私だけ残るの?



やだ、先生となんか居たくない。
なんて失礼な事を思っていると、あっという間に先輩たちはいなくなっていた。



生温い風が、私と藤堂先生の間を吹き抜けた。


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