唯一の涙
「顧問として、いくつか聞いておきたい事がある。正直に答えろ、いいな」
はい、と答える代わりに頷いた。
先生はグラウンドに向けていた視線を、真っ直ぐ私に当てた。
何かを探るような、鋭い視線に思わず息をのむ。
これまで感じた事のない、強い恐怖に襲われた。
「浮ついた気持ちでマネージャーに志願したのか?」
「浮ついた気持ち…?」
先生が言った言葉の意味が分からず、鸚鵡返しで返した。
「男の俺が言うのも可笑しなことだが、彼奴らは顔も含めて良い奴らばかりだ。
恋愛感情を理由に入部を決めたのか……と聞いてるんだが?」
恋愛感情?
そんなもの、私が持っているわけない。
愚問だった。
「違います。私はそんな私欲のために、こんなことしませんから」
貴方の生徒に脅されましたとは、口が裂けても言えない。
私は至極真面目に言った。