唯一の涙

ユニフォームの袖口で汗を拭う先輩が、昨日と同じ、人懐っこい笑顔を浮かべていた。
汗が太陽の光に反射されて、キラキラと宝石のように輝く。



思わず、息をするのも忘れて見惚れてしまった。



「河原?」



「はっ……はいっ⁉」



「ぶはっ……‼」



裏返った声がツボに入ったのか、先輩は遠慮無く噴き出した。
苦しそうに目に涙を浮かべる先輩。



全身の熱が顔に集まって、かっと熱くなった。



「いつまで笑ってるんですか!そんなんじゃ、授業遅れますよ」



「いや、だってさ……ま、いいか…。それよりありがとな。マネージャー引き受けてくれて」



急に先輩から笑顔が消えて、真剣な顔になった。
私もそんな先輩につられてか、顔の赤みが引いていく。



「仕方ないでしょう……拒否出来なくなってしまったなら、引き受けるしかないし。……あっそうだ‼先輩、どうして金曜日の合宿のこと、私に言ってくれなかったんですか?」




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