唯一の涙

先輩は途端に首を捻った。
もつかして、先輩自身忘れてたとか?



え……あり得なくない?



合宿って、そう簡単に忘れられるものなの……?
普通、そんな大切なこと忘れないよね?



「そう言えば……そうだったっけ……?」



「そうだったらしいです。残念ですが……」



だからそんなに落ち込まないでよ。
なんだか、私が先輩を苛めてるみたいじゃん。



「やっべぇー。めっちゃ忘れてたわ……」



「あの、本当にもうやめて下さい!ほらっ、早く着替えて……‼」



膝を折って大袈裟に落ち込む先輩の腕を、無理やり引っ張る。
重っ……!!先輩、見た目軽げなのに、結構体重あるわ。



「夏希〜?河原ちゃん困っとるやん。良い加減可哀想やし、やめてやれやぁ」



この場に似合わない陽気な声。
肩に感じる、重み。



誰……?


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